2017年、当時の防犯カメラにはユーザーにとって大きな課題がありました。
それは製品を購入し完結するようなものではなく、配線工事…つまりは設備のような特性を持ち、多額の設置費用が発生してしまうことでした。
たとえばカメラ1台を録画機に配線するとします。
その場合、使用するまでに次のようなステップを要します。
- カメラ設置位置、壁面に穴開けする。
- カメラをビスで固定する。
- 穴開けした部分からケーブルを通し、カメラとケーブルを接続する。
- 接点に防水処理を施す。
- 断線に注意しながら、ケーブルを宅内にある録画機まで引き込む。
- 録画機とケーブルを接続する。
- 録画機とモニターをHDMI等で接続する。
- モニターで映像を閲覧する。
この8ステップは、当時いかなる防犯カメラでも同様に必要な作業でした。
もし施工業者に依頼した場合、工事費だけで10万円程度発生するケースがあります。
システム本体よりも工事費のほうが多く掛かってしまう。
設備においてはよくある話でしょう。
これは最もユーザーを悩ませる課題の一つであり、SREEはこれを解決したいと考えていました。
※relica G2をはじめとした無線式カメラが普及した今、反対に従来の配線式カメラの利点も再確認されています。
そんな時、この課題を精査した結果、次のような結論に至りました。
「給電、映像信号の送信、映像保存、映像の視聴」これらのために配線工事が必要である。
…
給電技術は日々進化しています。
特に「バッテリー」技術はスマートフォンの普及以降進化の一途を辿り、年々容量が増えているのはみなさんもご存知のはずです。
スマートフォンに搭載されているバッテリーは、リチウムイオン電池と呼ばれ、日々の生活に溶け込んでいます。
このリチウムイオン電池は、一般的に二酸化マンガンなどが採用され、正極・負極をリチウムイオンが移動することで充電放電を繰り替えし行なえる電池です。
現時点で、最も民生的で最も蓄電効率の高い技術であり、これを防犯カメラに採用しない手はありませんでした。
映像信号の送信…これは従来から存在する技術、無線通信を採用すればよいだけです。
無線通信には、イヤホン・ヘッドホンで採用されるBluetoothや、ルーターで採用されるWiFi等の技術が存在します。
利便性の高い遠隔視聴には、速度が早く無線範囲の広いWiFiが相応しいと判断しました。
映像保存は、そもそも録画機を用意せず、カメラ本体と録画機能を一体化させ、ここでは最小サイズの録画媒体であるMicroSDカードを採用すれば解決します。
映像の視聴については、この時代みなさんが毎日持ち歩いているモニター...
そう、スマートフォンがあります。
これは無線通信技術と大変相性の良い端末であり、皆さんの生活に最も馴染んだプロダクトの一つです。
スマートフォンアプリをインストールし、カメラと連携設定をおこない映像を視聴する。
そういったことが技術的に可能な時代となりました。
これらを踏まえ、SREEはバッテリー内蔵式のWiFi防犯カメラを開発することで課題を解決できることに気づきました。
そして重要なのは外観。
取扱をかんたんにするには、コンパクトかつ軽量であることが求められました。
バッテリーの実サイズやマザーボードのサイズを配慮し、慎重に検討を重ねました。
採用されたリチウムイオン電池は3400mAh、個数は2個となりサイズはφ18mm×65mm。
CPUの乗るマザーボードは、36mm×77mmと非常にコンパクトです。
また外装には、ABS+PCを採用しています。
それぞれ耐衝撃性に優れるため、剛性を要求される多くの分野で活躍している素材です。
特にABSはゴムのような特性を持つため、落下等の衝撃には滅法強いです。
一般的には、自動車のフロントグリル、ドアパネル等に採用されています。
これらを使用し企画を進めた結果、最終的に169g、46×48×103mmと防犯カメラでは大変コンパクトかつ軽量な外観に収めることが出来ました。
そしてこのプロダクトを「relica」と名付けました。
この段階でrelica(第一世代)が公開され2018年夏、楽天市場/Yahooショッピングにて販売開始。
発売後、多くのユーザー様から様々な反響を受けました。
■肯定的なレビュー😆
- 非常にコンパクトかつシンプルなデザインを気に入った
- 初期設定がかんたん、アプリもシンプル
- 映像品質が高い&夜間も高精細
- 防犯だけでなく、見守りカメラとしても活用
- 電源なしで場所を選ばないので助かる
- 賃貸マンションの玄関とベランダにも設置できる
■残念だったレビュー😢
- 初期設定のステップが多い
- アプリがSREE開発でないため不安
- カメラの通信状態とバッテリー状態が分かりづらい
コンパクトでどこにでも簡単に設置できる防犯カメラが求められており、その点を評価頂けた反面、未開拓の市場だったことを理由に、より踏み込んだ実装を行なえていなかったと反省しました。
その他、ユーザー様から「連続録画をおこないたい」「ネットワークのない環境でも使用したい」 等、前向きな要望を頂きました。
約1年間WEB上での販売を行ない、2019年より家電量販店での取り扱いも開始。
これは、より多くのユーザー様に設備ではなく家電としての防犯カメラを提案できる良い機会でありました。
…
【Chapter.2】へ続きます。